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建築できない別荘地:不動産鑑定士嶋内雅人のブログ

https://ameblo.jp/daigotukune/entry-12077719552.html

今回は、裁判と不動産価格の話です。


◎事件の概要

原告は、不動産業者から投資目的で別荘用地を160万円(11,400円/坪)で買いました。対象地は約464㎡別荘分蔵地で、JR飯山駅にある対象地付近の地図と分譲図面とに基づいて購入したのです。

ところが、購入後に、土地は傾斜地であり建築困難であることがわかりました。
(東京地判昭58.6.29)


◎判決

契約は無効であるとして、代金の全額返還が認められました。


◎解説
対象地は、JR飯山駅からあく10㎞にある山中でした。冬季は、積雪のため道路の通行が不可能になるばかりでなく、段々状の傾斜地でした。

買主は、民法95条の「要素の錯誤」による無効を主張して認められました。傾斜が概ね25度以上になる傾斜地は、ほぼ建物の建築は不可能です。さらに、傾斜があるためにコストがかかるだけでなく、安定した品質を長期にわたって維持することも困難になります。

この付近の土地の相場は、2,000~3,000円/坪であるのに対して、11,400円/坪で販売したのですから、約3.8~5.7倍ということにな
ります。


◎不動産鑑定の見地から

別荘地は、快適性を求めて購入するものです。購入にあたって注意すべき点は、水道・ガス・電気という生活の基本となる施設が完備されているかどうかです。

不動産の鑑定評価においても、これらが整備されていない別荘地の価格は、山林としての価格程度であることが多くあります。

このような別荘地の売買は、原野商法として違法行為を伴う場合があります。原野商法とは、ほとんど無価値の土地を建築物の建築が可能であるかのように偽って、時価の数百倍の価格で売却する悪質商法です。

このような悪質業者のセールストークは、その土地について、「宅地建物取引業法の宅地です」というものです。

宅地建物取引業法は、第2条第1号で宅地を「建物の敷地に供せられる土地をいい、都市計画法 (昭和四十三年法律第百号)第八条第一項第一号 の用途地域内のその他の土地で、道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外のものを含むものとする。 」と規定しています。

また、同法施行令第1条は「宅地建物取引業法第二条第一号の政令で定める公共の用に供する施設は、広場及び水路とする。」としています。

この規定がくせ者です。すなわち、例えば土地登記簿上の地目が「田」「畑」「池沼」「山林」「原野」である土地であっても、その土地を、建物の敷地の用に供する目的で取引するならば、宅地建物取引業法上はすべて「宅地」として取り扱われることになります。

したがって、都市計画区域外の山林や原野を、建物の敷地に供する目的で取引する場合には、その山林や原野は「宅地」として取り扱われることになるわけです。