高圧線下地:不動産鑑定士嶋内雅人のブログ
https://ameblo.jp/daigotukune/entry-12077739662.html
今回は、裁判と不動産価格の話です。
◎事件の概要
買主Xは、工場を建築する目的で、借地権を買い受けました。ところが、土地の上に高圧の送電線が通過しており、送電線の下側3m以内及び両側3m以内は建築物を建てることができないことがわかりました。
建築できる面積は約8.3㎡にすぎません。そこでXは、隠れたる瑕疵があるとして売主Yに損害賠償を求めました。
(大阪高判平9.3.25)(大阪地判7.10.18)
◎判決
上空を高圧電線が通過している場合には隠れたる瑕疵にあたらないとして、損害賠償の請求を認めませんでした。
◎解説
高圧線下地とは、特別高圧(7,000ボルト以上)の架空電線路の直下またはこれに近接している土地をいいます。
このような高圧線下地については、電気事業者と土地所有者及び借地人との間において、地役権設定契約または送電線路架設保持に関する契約が締結されています。これにより、利用が制限されます。
この内容は次のとおりです。なお、離隔距離とは最短の直線距離のことで、水平離隔距離とは水平投影面で測った距離のことです。
1.高圧線の使用電圧が17万ボルトを超えるとき
高圧線からの水平離隔距離3m以内に建造物等を建てることができません。 すなわち、高圧線の下には建造物等を建てることができません。
2.高圧線の使用電圧が7,000ボルト以上17万ボルト以下のとき
使用電圧が3万5,000ボルト以下のときは、高圧線からの離隔距離を直線距離3mとします。
3万5,000ボルトを超える時は、超える部分の1万ボルトまたはその端数ごとに15㎝を加えた値を3mに加算しまた数値を離隔距離とします。
これらの離隔距離をとれば、高圧線の下に建造物等を建てることができます。
この事件では、電圧が17万ボルトを超えていました。裁判所は「借地の上空を高圧架空電線が通過している場合には、建物の建築が禁止される具体的範囲を知ることは比較的容易である」としました。
不動産登記簿の乙区には、その制限の内容が表示されているものもあります。このため「隠れたる瑕疵にあたらない」と判示しました。
◎不動産鑑定の見地から
上記のとおり、土地の上空に高圧線があると建てられる建築物の規模・高さに制限が加わります。それだけ土地の利用価値が下がるのですから、評価額も下がります。
また、高圧線が風を切る音や電波障害・電磁波のよる健康への影響等により、市場性も減退することでしょう。
高圧線下地について解説しているURLです。参考になさってください。
http://allabout.co.jp/gm/gc/390004/