底地価格:不動産鑑定士嶋内雅人のブログ
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今回は、土地の増減価要因の話です。底地価格を取り上げます。
宅地の分類の一つに、底地があります。不動産鑑定評価基準は、「底地とは、宅地について借地権の付着している場合における当該宅地の所有権をいう。」としています。
要は、借地人に貸している土地のことです。
地主は、借地人から地代を受け取りますが、その土地を自分で使用収益することはできません。借地人がその土地の上に建物を建て、使用収益します。地主にとって底地とは収益の発生源でしかありません。
したがって、底地の価格は地代の額であるかによって決まります。地代が安い場合は底地価格は安くなり、高い場合は底地価格は高くなります。
地代は、地主と借地人との交渉によって決まりますから、どのように地代を改定してきたのかによって地代が決まります。二者の力関係が反映します。
更地価格に底地割合をかけると底地価格が求められる、という考え方もあります。この場合は、更地価格よりも底地価格のほうが常に低くなります。
しかし、それほど単純ではありません。
例えば、ロードサイド店舗を建てるために、いくつもの土地をまとめて借りる場合を考えてみましょう。
ある土地を借りなければ、十分な大きさの店舗が建てられないこともあります。借主は相当に高い地代を払っても、その土地を借りるでしょう。
この場合は、底地価格が更地価格を上回ることもあり得ます。
もちろん、一般的には地代をなかなか値上げすることができず、低い水準で推移してきました。この場合は、底地価格は更地価格よりもかなり低くなります。
さて、ある上場会社からの依頼で、底地を評価したことがあります。地代が相場よりも高い水準でしたので、底地価格は高く求められました。その会社の担当者の方は、「これなら減損しなくてすみます」と安心されました。
ところが、その会社を監査している監査法人のお抱えの不動産鑑定士から、クレームがつきました。「底地価格は、更地価格に底地割合を掛けなければならない」と。
上で説明したように、そのようなことはありません。私はそのように回答しましたが、その不動産鑑定士は食い下がってきます。そして、実に稚拙な質問をしてきました。
曰く、「底地の利回りは、地主が底地に建築した場合の土地建物の利回りから、建物の利回りを控除すれば土地の利回りが求められるのではないか」と。
上記のとおり、土地上に建物を建てるのは借地人です。地主が建物を建てるのではありません。私はそう主張し、軽く一蹴しました。