幽霊山:不動産鑑定士嶋内雅人のブログ
https://ameblo.jp/daigotukune/entry-12077714055.html
今回は、不動産用語の話です。
もう9月ですのですでに時期外れではありますが、今回はちょっと変わったテーマで、幽霊の話です。
「購入した不動産に幽霊が出ることが購入後にわかった。購入者は瑕疵担保責任による損害賠償を請求し裁判に訴えた。判決では、購入価格の20%の価額の損害賠償が認められた。」というものではありません。
「幽霊山」といって、不動産の表示登記に関わるものです。ではまず、この前提となる「縄のび」「縄ちぢみ」についてご説明します。
不動産登記簿の表題部には、その土地の面積が記載されています。ところがこの面積は、必ずしも正しいものではありません。
「縄のび」とは、登記面積よりも現況の面積のほうが大きいことをいいます。これは、農地等にみられます。
太閤検地のときから、農地の年貢は田畑からどれだけの収穫があるかをもとに定められていました。その収穫は、田畑の品等と面積によって決まります。
そこで農民は、なるべく田の面積を少なく登録してもらい年貢を少しでも軽減しようとしました。よって、登記面積よりも実際の面積のほうが大きくなるわけです。
「縄ちぢみ」は、上記と反対に登記面積より現況の面積のほうが小さいことをいいます。これは、山林でよくみられます。
特に幕府直轄地である天領の山林は課税の対象にならないため、その山林を支配していた代官は面積を広く申告しました。自分の支配している山林の面積が大きければ、それだけ自分の威信が高まると考えたのでしょう。
縄のび・縄ちぢみについては、このURLのウェブページに、簡単な解説があります。
http://www.homes.co.jp/words/n1/525001540/
ここで幽霊山です。縄ちぢみしている山林(登記簿5万㎡・実測3万㎡)があるとします。この山林を少しずつ分筆しながら売っていきます。3万㎡を売ったとき、登記では2万㎡が残っていますが、実際の山林はもう何も残っていません。こういう状態の山林を幽霊山といいます。
しかし、バブル期にはこのような幽霊山を承知の上で買う人がいました。当然事情を知っていますから、タダ同然の安値で買います。そして、借金の担保として金融機関等に差し入れます。登記はありますので抵当権の設定登記もできるわけです。
また、これをさらに分筆して現況有姿の別荘分譲などとして売る人もいたそうです。
山林にはご注意を。