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リゾートマンションの減価:不動産鑑定士嶋内雅人のブログ

https://ameblo.jp/daigotukune/entry-12077714374.html

今回は、裁判と不動産価格の話です。


◎事件の概要

1989年にAリゾートマンション(8階建)の最上階の1室を買いました。Aマンションは1991年に完成しました。ところが、1994年にAマンション分譲業者がその近くに11階建てのBマンションを竣工させました。買主は、景観が阻害されたとして、売主の業者に対して損害賠償の請求を行いました。
(横浜地判平8.2.16)


◎判決

売買代金の約20%相当額である694万円が眺望景観の価値下落分とされ、売主に支払を命じました。

売主は、高台にあるこのAマンションの最上階の眺望のよさをセールスポイントとしていました。なお、最上階の価格は3,860万円であるところ、1階の平均価格が2,856万円であり、これは最上階に比べて26%程度低い水準でした。

ところが、Aマンションの完成の翌年の春に、Aマンションの分譲業者と同じ業者が11階建のBマンションの建設を計画しました。それの立地は、Aマンションから50~60m離れた隣接地です。そして、Bマンションは1994年に完成しました。

売主業者は、Aマンションを販売するにあたり「敷地周辺において、将来、中高層建築物が建築される場合があることを、買主は異議なく承諾する」という特約が契約条項に入っているため、賠償の責任はないと主張しました。

これに対して裁判所は、「建物が建たないと信頼して契約したのは、業者が眺望のよさを強調して販売したことにある。売主業者はマンションを建築しない信義則上の義務を負う」とし、契約書の特約にあった「マンションの建築がありうることの承諾」の条項は、「具体的な説明のない以上、買主が承諾したものとは認められない」と判示しました。

すなわち、売主業者の行為は「信義則上の義務に反する違法な行為」であるとして、売買価格の20%に相当する694万円を、眺望と景観の減価相当額と判断しました。

1階の価格が最上階の価格より26%低いことから、20%の減価額は眺望景観の阻害により、最上階であってもその価格は1階の価格相当と判断したことになります。

この減価額は次式により求められています。

         経過年数による下落    価格の減価
3,860万円×  (1-0.1)  ×   0.2   =694万円

この減価率は、リゾートマンションについてのみ当てはまると考えられます。一般のマンションの最上階も、やはり最高価格となりますが、ここまでの差異は生じません。なぜなら、季節に応じて屋上のコンクリートの温度変化が大きく、最上階は冷暖房費が余計にかかるからです。