崖地:不動産鑑定士嶋内雅人のブログ
https://ameblo.jp/daigotukune/entry-12100045274.html
◎事件の概要
買主Xは、住宅を建築する目的で土地を買いました。
しかし、県の「がけ条例」によって、強固な擁壁を設置しなければこの土地について建築確認が得られないことが、その後わかりました。
契約の目的を達成できないため、Xは売主Yに損害賠償を請求しました。
(千葉地判昭62.7.17)
◎判決
建築確認に必要な擁壁の設置費用について、損害賠償を認めました。
◎解説
この土地には、北側に高さ2.94mの崖がありました。
この崖が崩壊する危険を防止するため、県の条例である「がけ条例」が適用されることとなり、新たに擁壁を設置する必要となりました。
なぜなら、この北側の崖部分が単なる石積みになっていて、条例によって必要とされる強固な擁壁に該当しなかったためです。
これにより、このままでは建築確認が受けられないことがわかりました。
仮に北側部分を石積みのままにすると、「がけ条例」によって、北側の崖の上端部から5.88m離れた位置に建物を建築しなければならなくなります。
この土地の奥行は約12mですので、この土地の半分ほどには建物を建てることができなくなります。
裁判所は、「建築制限のない土地として売買された」として「民法570条にいう瑕疵にあたる」と判示しました。
◎不動産鑑定の見地から
妥当と考えます。
本来の用途に供するための費用が擁壁設置費用なのです。これを認めることによって、その土地に住宅を建築することができます。
他にも、老朽化した建物がある土地については、更地価格からその建物の取壊費用を控除した金額が、適正な価格と考えられます。
静岡県のがけ条例です。参考にどうぞ。
http://www.izusou.co.jp/public1/pdf/shizuoka10.pdf#search =