風俗営業法:不動産鑑定士嶋内雅人のブログ
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今回は、裁判と不動産価格の話です。
◎事件の概要
1975(昭和50)年に、買主はパチンコ店を開設するために土地の売買契約を不動産業者の媒介により締結し、手付金を支払いました。
パチンコ店は、風俗営業等取締法施行条例によって、付近に学校や病院があるときは、これらからの承諾が必要でした。しかし、買主は中学校があることに気付かず、その承諾をとれませんでした。
買主が残金を支払わないので、売主は手付金を返還しなかったところ、買主はパチンコ店を開設できないのは錯誤による無効であると主張して、争いとなりました。
(札幌高判昭55.9.30)
◎判決
買主に重大な錯誤があり、手付金の没収を認めました。
◎解説
風俗営業等取締法施行条例により、学校・病院の敷地から100m以内にパチンコ店を開設するときは、その学校・病院の承諾が必要でした。
買主は、病院があることには気づいており、承諾書をとったので契約したのですが、その付近にあった中学校は見落としていました。中学校と交渉しましたが、結局その承諾を得ることができませんでした。
裁判所は、「買主には動機の錯誤がある」としながらも、「不十分な調査をしただけで、学校は存在しないものと思い込み…周囲の状況を調査することを怠った」としました。
買主が「極めて容易に発見しうる中学校の存在に気付かなかった」のは「重大な過失」があると判示しました。
◎不動産鑑定の見地から
不動鑑定評価にあたっては、このような事例については特に注意が必要です。
鑑定評価においては「最有効使用の判定」が行われます。
最有効使用とは、不動産鑑定評価基準では「現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくもの」とされます。この最有効使用を前提として、価格が形成されると考えます。
したがって、本件対象地上にパチンコ店を建てることはできないのですから、この場合にパチンコ店を最有効使用と判定したら誤りとなります。
■編集後記■━━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………
ネットサーフィンをしていて、真空管アンプのサイトにたどり着いたことがあります。
半導体がどんどん小型で高性能になっているのに、真空管アンプを珍重している人たちがいます。言うならば、蒸気機関車のファンの心理と同様でしょうか。
しかし、私がラジオ少年だったころには、まだ真空管は現役でした。そのころは、真空管の末期、トランジスタの全盛期、ICの初期だったころだと記憶しています。
そんな時代でも、私は真空管が好きでした。真空管はトランジスタに比べて大きいので、工作しやすかったからです。トランジスタのようにハンダごての熱によって壊れることもなく、ハンダ付けもしやすかったこともあります。
また、自分が作ったラジオの真空管の中心がほのかに明るくなるのを見ると、いかにも「こうやって真空管が作動し、音がでるのだな」という実感が湧いたものです。
そう考えると、現代の電気機器は全くのブラックボックスになってしまいました。どうやって動いているのか、さっぱりわかりません。
「これでは、工作も面白くないだろうな」などと思いながら、息子や娘にスマホの使い方を教わっている今日この頃です。