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自殺のあった不動産:不動産鑑定士嶋内雅人のブログ

https://ameblo.jp/daigotukune/entry-12077402312.html


不動産について、「訳あり物件」という言葉を聴いたことがありませんか。過去に自殺・殺人事件のあった不動産です。

こんな判決がありました。


◎事件の概要

土地建物を総額7,100万円で買ったところ、売主の親類が5か月ほど前 に首つり自殺をしたことが、代金完済・引渡しの5日後にわかりました。

買主は、売主に対して瑕疵担保責任による損害賠償を請求するとともに、建物を取り壊して土地を第三者に売却しました。

他方売主は、その金額は土地だけの価格であり、また特約として「建物の老朽化等のため、本件建物の隠れた瑕疵につき一切の担保責任を負わない」と契約書に記載した旨を主張しました。
(浦和地裁川越支判平9.8.19)


◎判決の概要
 
交渉の過程で建物で自殺があったことが隠されたまま契約が成立したものであり、自殺が明らかになれば、価格の低下が予想されます。

この建物が居住用で、しかも自殺が最近のことであたことからすると、このような心理的要素に基づく欠陥も、民法570条にいう隠れた瑕疵に該当します。

この瑕疵は、特約の予想しないものとして、売主の担保責任を免れさせるものではありません。買主は、地上建物を取り壊して他人に売却したため、損害賠償を選択しました。

そこで、①売買契約における不動産の代金額と②瑕疵の存在を前提として適正な価格との差額、893万2,900円が賠償額であるとして、売主に支払を命じました。


◎不動産鑑定の見地から

本件は、自殺後5か月経過した後の売買です。対象不動産の総額7,100万円に対して、893万2,900円の賠償額が命じられました。すなわち、約13%相当の減価が発生したことになります。

ここで問題となるのが、この減価率は一律に全国的な水準で適用できるか否かということです。

減価率の背景にあるものは、市場性の低下です。このような判決がそれなりに出そろえば、取引の際の指標となるかもしれません。

そうなれば、都市圏か地方圏か、地価水準の高低、死因(自殺か他殺か)等を説明変数とし、価格を被説明変数として回帰分析をすることも可能でしょ う。

さて、ここまで書いてきて、思わずハァとため息が出ました。人間は誰しもいつかは死ぬわけです。人の生死をもとに不動産の経済価値を判定しなければならないとは、不動産鑑定士という筆者の仕事も因果なものです。