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保安林:不動産鑑定士嶋内雅人のブログ

https://ameblo.jp/daigotukune/entry-12077738415.html

今回は、裁判と不動産価格の話です。


◎事件の概要
買主は、宅地造成し建物を建築する目的で、不動産業者から山林を購入しました。ところが、この山林は保安林の指定を受けており、宅地造成等ができないことがその後判明しました。そこで、買主は売主に対して瑕疵担保責任を追及しました。
(最高判昭40.9.30)


◎判決
売主の瑕疵担保責任を認めました。


◎解説
保安林とは、公益目的を達成するために伐採や開発に制限を加える森林のことで、森林法で規定されています。

具体的には、農林水産大臣が①水源のかん養②土砂の流出の防備③土砂の崩壊の防備④飛砂の防備⑤風害・水害・潮害・干害・雪害・霧害の防備⑥なだれ・落石の防備⑦火災の防備⑧名所・旧跡の風致の保存等の目的を達成するために指定します。

関東地方にお住まいの方ならお解りになるかもしれませんが、中央線の高尾駅と相模湖駅の両側は山林になっており、建物は見当たりません。あの山林は水源かん養保安林です。

保安林に指定された区域では、都道府県知事の許可を受けなければ①立木の伐採②立竹の伐採③立木の損傷④家畜の放牧⑤下草・落葉・落枝の採取⑥土石・樹根の採掘・開墾その他の土地の形質を変更する行為をしてはならない、という制限があります。

本件の宅地造成は、⑥土地の形質の変更に該当します。これに違反した場合には、都道府県知事は違反行為を中止すべきこと、現状に復旧すべきこと等を命ずることができます。

都市計画法とは定義が違いますが、森林法でも「開発行為」は許可制となっています。そして、宅地造成が目的では開発行為が許可されることはありません。よって、瑕疵担保責任が認められたのは当然でしょう。なお、例外として、国又は地方公共団体が行う場合等は、許可がいりません。

農林水産大臣は、保安林の指定の理由が消滅したときは、遅滞なくその部分につき保安林の指定の解除をしなければならず、また公益上の理由により必要が生じたときは、その部分について保安林の解除をすることができます。

ただし、解除されるのは、よほどの公益性がある場合のみです。例えば、道路関係四公団が道路を築造する場合等です。他方、市町村が公民館を建築しようとして解除を申請しても認められなかった場合があります。


◎不動産鑑定の見地から
このように、保安林は私的な用途に供することはできません。他方、固定資産税は非課税とされています。収益も費用もないのですから、価格はゼロでしょう。何らかの価格がつくのは、公共用地として買取られる場合のみだと考えられます。

しかし、二酸化炭素の吸収源としては有用です。排出権取引がなされる場合には、価格がつくかもしれません。


下のURLは林野庁による解説です。ご参考になさってください。

http://www.rinya.maff.go.jp/j/tisan/tisan/con_2.html